
『一人暮らしを頑張っておられた高齢の患者さん。いろいろな病気のために入退院を繰り返し、いよいよ一人暮らしがきびしくなった・・。』
高齢の方の一人暮らし、あるいは二人暮らしの方が増える中で上のようなケースはよくあることです。そして・・次の生活の場所を考える時に「施設」の方向となることが一般的でしょう。「施設」と一言で言っても、「特別養護老人ホーム」「有料老人ホーム」「介護老人保健施設」「グループホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」などいろいろあります。
入院患者さんが病状は安定したけれども、もとの生活はむつかしくなり施設を探し始めます。もちろん、ご本人やご家族の希望を優先しながら。しかし・・このとき施設によってはいくつかの壁があります。ある患者さんは、心不全の比較的高価な治療薬や、血栓をできにくくする薬を使っていました。・・「高価な薬があるとむつかしいですね」「薬の変更はできませんか?」こう言われることがよくあります。
あるいは、「インスリンを1日2回注射しているけど、1日1回にできませんか?」「痰が多いようですけど夜間吸引は必要ですか?夜間吸引が必要な場合はむつかしいですね」といわれることもあります。
壁の一つは、施設の収益からみて高額な薬などが使用しにくいことです。「施設」の種類によっては、薬代は原則「全額施設負担」です。そうなると・・高額な薬を服用されている方が居されると「施設」の持ち出しとなります。
また、もう一つの壁は、医療度によるものです。医療スタッフの数が少ない・・夜間には医療スタッフがいないなどの理由で受け入れていただけないこともあります。
また、「施設」ではないのですが、医療度が高い方は「療養型病棟」に移られることがありますが、ここでも同じようなことが起こります。例えば、点滴でカロリーが高いもので栄養補給を行いながら、お楽しみ程度に食事を食べていただくことをしていたとします。完全に絶食にしないことは口の機能を維持するためにも重要ですし、「食べる」ということ自体人間の基本的な尊厳にもかかわりますから。ただ、転院先では、「点滴」と「食事」を併用することはむつかしく、経口摂取は中止となることも珍しくなりません。これも、点滴と食事代を両方請求できないため施設・病院の持ち出しとなるためです。
私は、施設を批判しているわけではありません。今の医療・介護の政策が、患者一人一人の最善を考えて設計されていない問題と、あまりに少ない医療者・介護者の問題が背景にあるのです。