
ずいぶん前に「エクセレント・ホスピタル」という本を読んで、衝撃を受けたことがあります。「これは読む価値があるなあ・・病院の今後のためになる」と思い、管理部の皆さんの必読書としました。
このなかに、Key Word at Key Timeという言葉が出てきます。これは、「最適なタイミングで、最適な言葉をかけること」をいいます。病院の患者さんへのサービスを向上するためには、職員の行動を標準化することが重要といえます。たとえば、挨拶一つにしても、職員全員が笑顔で挨拶できる病院は気持ちがいいと思いますが、「全く挨拶ができないスタッフ」が一人でもいたら・・そのスタッフと出会った患者さんは、そのスタッフの行動を通して病院を評価するでしょう。
Key Word at Key Timeの例として、「患者さんと接するときに、必ず自己紹介をする」
「カーテンを閉める際に、『あなたのプライバシーを守るために、カーテンを閉めさせてもらいます』と必ず言う。」が挙げられていました。
職員の行動の標準化することで、患者さんの満足度が上がる。そして、そのことが職員のモチベーションにもつながり、職場が生き生きする・・。そう考えて、病院で『1部署1Key Word at Key Time』に取り組んだことがありましたが・・それも長くは続きませんでした。
職員の標準化とは異なりますが、私自身は、この本を読んでから実践していることが一つあります。患者さんをベッドサイドで診察した後、立ち去る前に「カーテンはこの位置でいいですか?」と必ず聞くことです。
私が入院していた部屋はドアとベッドとの間にカーテンがあります。そもそも、最近は入院生活でのアメニティーやプライバシーの保護を考えて、カーテンがない病室は重症管理を行う部屋ぐらいに限られているでしょう。
カーテンを引いてあれば、ドアが開いても廊下から丸見えになることはありません。とくに、悪いことをしているわけではありませんが、急に廊下の人から見えるというのは、あまり気持ちのいいものではありません。多くのスタッフ・・医師、看護師、看護助手、掃除をされる方・・が病室を出入りされます。多くのスタッフは、カーテンを開けて入ってきても、出ていくときにしっかりとしめる方は少なかったように思います。人によっては、開けっぱなし、出ていくときは全くカーテンに触らず出て行かれたスタッフもいました。少なくとも、部屋を出ていくときに「カーテンはこの位置でいいですか?」と質問された方はいませんでした。
手術翌日、ICU(術後の手中治療室)から、一般病室に移りました。このとき、ナースコールはきれいに丸められて、ベッドからは手の届かないところに置かれていました。ナースコールは、何かあったときに押せば、看護師の詰め所や看護師が携帯しているPHSがなって知らせます。何か急なことがあったとき(痛みが出た、気分が悪い)、点滴が終わりそう・・などのときに知らせる重要なものです。
むかし、東神戸病院で、病室で食事をされていて、食事を喉に詰まらせかけた方がいました。その方は、ナースコールを探しましたが近くになく、同室の患者さんが異常に気が付き、ナースコールを押して知らせてくれたことがあります。看護師が駆け付けて大事にはなりませんでしたが・・一歩間違えれば命にかかわるところでした。
このことがあってから、しばらくはその病棟での「Key Word at Key Time」は、次のようなものとなりました。
『ベッドサイドから立ち去るとき、必ず「ナースコールはこの位置でいいですか?」をいうこと。』
私自身は、術後痛みもありましたが、全く動けないわけではなく、「カーテンを閉める」ことも、「ナースコールを手元に置くこと」もできました。でも、患者さんの中には、全く動けない人も多くいます。特に高齢の方の術後には動けという方が無理ですよね。そうした方たちが、「不快な思い」をしたり、「危険な目」にあったりする可能性があります。
むかし、東神戸病院で全部署にすすめていた「Key Word at Key Time」ですが、今は忘れ去られていますね。いや、そのことを知らない世代のスタッフが増えました。患者視点を持つということ、ある事で職場が一つに集中することで、よりよい職場やより良い病院になることでしょう。
「Key Word at Key Time」!「もう一度見直してもいいかもしれませんね!